【4】 エンゼル係数について考える

 

 

 

 

最近の新聞記事で、家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」が2023年は27.8%に達し、1983年以来40年ぶりの高水準となったことを知った。
生活感が好転しない根拠の一つではないだろうか。

本川裕 統計探偵はどのようにみるのであろうか。
ゴローバルな視点が必要、国際情勢・社会情勢に通じることが大事と説明する。
「なるほど」と思った。

 

「なぜ、 男子は突然、草食化したのか」( 著者 本川裕 )の中から。

 


 

 

 

本川裕 統計探偵はこう分析する。 

2000年代の後半以降は、再度、エンゲル係数が上昇しており、2016年には25.8%と1987年のレベルにまで戻し、その後3年間は25.7%となお高い水準が続いている。
(そして、2023年 27.8% )

 こうした最近のエンゲル係数の上昇については、次のような要因を指摘している。

(短期的要因として)
・    収入の伸び悩み・減少
      (エンゲルの法則どおり収入が減っても食費は減らせない)
・    消費税アップによる実質的な生活水準の低下
・    円安効果(輸入が多い食料品の相対価格の上昇の影響)
(長期傾向だが最近強まった要因として)
・    共稼ぎ夫婦の増加(惣菜・弁当などの中食や外食の増加)
・    高齢者世帯の増加(教育費やマイカー費などの減。食費は減らせない)
・    1人世帯の増加(1人分の食料購入は割高)
・    安全志向・グルメ志向(高額につく安全な食品あるいは美食へのこだわり)

 


1993年 から 2004年 「世帯消費」が低下しているのに、なぜエンゲル係数が下がっているのか。

本川裕 統計探偵はこう分析する。 
家計に占める通信費割合が 1995年から2005年にかけて増えたから。通信の増加に対して食費を切りつめた。

 


 

 更に、本川裕 統計探偵はこう分析する。 
日本で情報通信革命が通信費を上昇させた1995~2005年の時期には、生活水準が上昇していなかったにもかかわらず、エンゲルの法則に反して、エンゲル係数が低下した。
同様に、世界的に情報通信革命が進展していた同時期に、米国と英国を含めて、すべての国でエンゲル係数が下がり続けていた状況が認められる。

もう一つ。近年、欧米主要国の動きを見る限り、米国を除いて、反転の時期は異なるが、日本と同様に、下がり続けていたエンゲル係数が最近になって上昇に転じている。明確に反転とは言えない米国も横ばいか微増には転じている。

その原因。

 第1に、高齢化である。先進国では高齢化に伴って、退職後の高齢世帯やひとり暮らし高齢世帯が増加している。食費以外の教育費などの負担が減る高齢世帯や食べ残しが多かったりするため食費が割高になりがちなひとり暮らし高齢世帯ではエンゲル係数が高くなるという特徴がある。従って、高齢世帯の割合が増えればエンゲル係数を押し上げる効果が働くのである。また、高齢化にともない生産年齢人口が減れば経済成長率が低下するのでエンゲル係数の下落を遅らせる効果もあろう。

 第2に、女性の社会進出や女性就業率の上昇にともなって、ますます共働き家庭が増え、各国で食費に占める調理食品や外食の割合が増えている。調理食品や外食は加工やサービスの費用が加わっているので、同じ栄養価を得るための費用は家庭内で調理する場合に比べると高くなるはずであり、食費を全体として拡大させる要因となっているのは間違いなかろう。

 第3に、食料価格の高騰が挙げられる。図を見ると、2009年には、日本、ドイツ以外の国でエンゲル係数が短期的に跳ね上がっているが、これは、2008年の穀物価格の急上昇の影響と見られよう。日本がその時期にエンゲル係数に大きな変化が見られなかったのは円高傾向が相殺要因として働いていたからである。



 

エンゲル係数が最近になって上昇に転じていることの説明、高齢化、女性の社会進出、食糧価格の世界的高騰、なるほどと思うが、bunnbunnmomo の直感は、もっと大きな理由、グローバルな新自由主義の拡大と戦争と紛争の激化にあるのではないか、と思う。